社会的な問題点
チケット転売やPS5の転売業者が問題になっている。転売によって、価格が釣り上がり、本来の価格で買えなくなることや、本当に欲しい人に行き届かなくなっている、売り手の希望の価格で売ることができていない、それらの利益が売り手に還元されない、などという問題が発生している。以下では一旦チケットの転売に絞って問題を見ていく。
経済学的な問題点
単純に考えれば、チケット転売は需要と供給があるから成り立っているわけで、このことは経済的に極めて自然であり、問題がない。むしろ、超過需要にも関わらず、市場を無視して安すぎる定価で販売を続ける供給サイドに問題があると考えられる。
なぜ彼らは定価でうるのか?
1 アーティストとファンの良好な関係維持のため
ー長期の関係なので短期的な需給で値段を変えたくない
ーお金儲けのために音楽をやっているとみられたくない
2 本当に欲しい人に売るため
ーお金持ちだけに渡したくない
この点については経済学的にはお金を払う人の方が熱心なファンなのでは?という疑問もある。しかし、安易にそのチケットへの熱量はお金では測れない。
ある人にとっては1週間の給料で5万円のチケットだが、ある人にとっては1日で5万円の給料かもしれない。前者の人にとってはその公演に1週間の思いが入っている。後者の人にとっては1日分の思いでしかない。値段で思い入れを測ることはできないので、定価で売ることに意味はあるのだ。
3 贈与としての定価販売
ー提供する価値よりも低い価格で販売することで、ファンは安く買えた分をアーティストからの贈与として受け取り、その分を熱心な応援へと変換させることを狙っている
転売を認めることの社会へのメリット
上記のような定価で販売したいというアーティストサイドの理論は理解できる。しかし、現状では転売も重要な市場の機能である。転売によるメリットは以下である。
1 社会の厚生は増加している
ー販売者も購入者もメリットがあるから取引が成立している
ーつまり、両者ともに厚生が増大している
2 私的財産権の保護
ー購入したチケットは私的財産であり、売るのも購入者の権利である
3 リスクシェアリング
ー転売市場が存在することで、安心してチケットを購入できる
→いけなくなってしまったチケットを、欲しい人に売ることができることで、万が一の病気や仕事のリスクにも対応できる
転売を認めないことによる社会へのデメリット
もし、転売会社を違法として規制しても、その需要は自然発生的なものであり、なくなるわけでない。
ーこれまで転売会社が担当していた取引における安心性がなくなる
ーアンダーグラウンドなダフ屋の横行を招く。
ということになる。
解決案としての本人確認の導入
近年は規制のために、本人確認などを導入している。これは、
ー定価で売ることができる
ー転売をすることが難しい
ため、アーティストにとっては転売をなくしながら、定価戦略を続けるために良い方法だ。しかし、多くの場合、チケットや購入権利は抽選になっている。結果として、お金を払ってでもみたい、というファンは残念ながら排除されてしまう。
解決案としてのオークション形式とのハイブリッド
良い方法としては、オークション形式も定価販売も導入することである。
有料のファンサイトなどを使って、優先度の高い消費者の数を特定する。彼らとは長期の関係を構築するべきで、かつ抽選という不安定さを減らすべき対象である。彼らに対しては、定価販売が望ましい。
ーファンサイト会員には定価で販売する
ー購入者が多すぎる場合には抽選で販売する
ーその際には、落選した人には次回の優先抽選券を渡す、というように、抽選の不安定さを削減するように努める。
ー購入時には本人確認を行うこと。
一方で、優先度の低い消費者(非ファン)に対してはオークション形式が望ましい。なぜなら、非ファンの場合は定価で購入ができたとしても、その後転売サイトにおいて購入価格よりも高い値段で販売することができるなら、販売してしまう可能性が高いからだ。元々オークション形式で販売することで、転売会社の入り込む余地は減り、結果としてその利益もアーティストに還元されるようになる。
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